忘れられない大学デビュー

人生

大学デビューを決意した春

大学デビューとは、小学校・中学校・高校を陰キャラとして過ごしてきた者たちが大学への入学を機に陽キャラに転身することを言います。

友達も恋人もいない18年間。人生の一発逆転を願っていた。大学合格のお祝いに親からテニスのラケットを買ってもらいました。陽キャラの代名詞・テニスサークルに入ろうと思いました。

キャンパスでは学生が新入生の勧誘を行っています。構内にポスターを貼ったり、チラシを配ったり、キラキラ輝くエネルギーを撒き散らしてました。顔がオタクで気持ち悪いオーラを出していた僕は無視され続けましたが、めげずに上級生からチラシを奪い取ります。部屋にテニスサークルのチラシをずらりと並べ、一つのサークルを選びました。

見学場所は大学から離れたテニスコートでした。買ったばかりのラケットを抱えてドキドキしながらコートに向かいます。絶対に大学デビューが成功すると根拠のない自信が胸いっぱいにあふれていました。

サークル全員に無視される

サークル体験にワクワクしている新入生たち。その集団から少し離れて立っている僕。どこか近寄れない空気を感じていました。そして、上級生がみんなを集めて話し出しました。

「うちのサークルはみんな仲良し!飲みにも行くよ!」
「緊張しないで楽しんでください!」
「ここに来てくれた人がみんなサークルに入ってくれると嬉しいです!」

ドキドキ。ワクワク。今日で暗かった人生と決別できる。勉強も恋愛も充実した大学生活が始まるんだ!

「それでは、これから各コートで練習します。」

上級生が新入生を連れていく。チャラい男は率先して可愛い子を連れていく。すでに先輩に媚を売っている女子大生も多い。新入生が次々とコートに入っていく中、誰からも声を掛けてもらえなかった人間が一人いた。

(アッ、アッ、アッ、アアッ)

泣き出しそうになっていた。ラケットを持つ手が震えている。楽しそうにラリーをする学生達を見ていて吐き気を催した。立ち尽くして涙を拭き、思い切って休憩中の上級生に声を掛けました。

「あああああぼぼぼくはどどどどどこにいいいいい行けばばば」

「何?キミは」

「ササササークククルルルルルのけけけけk見んがく」

「そう…空いているところに入ったら」

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああAAAAAAAAAAあああああああ!!!!!!!!」

上級生は冷たく去っていった。入れてもらえなかった。18年間友達も恋人もいなかった陰キャラがこの状況からコートに飛び込むのは不可能。ラケットをぎゅっと抱きしめて駅のほうへ足を進めた。もう二度とテニスコートに入ることはできない。電車の中で涙が止まらず、何度も何度も涙を拭った。

この事件をきっかけに、僕は二度とサークルに関わらなくなりました。心に深い傷を付けられ、他のサークルに入る気力もなくなりました。講義で顔を合わせるだけの同級生とも友達になれず、ほどなくして大学にも行けなくなりました。大学デビューが失敗しただけでなく人生初の不登校デビューを飾ってしまい、留年しました。

大学デビューの厳しい現実

「大学デビュー」で検索してこのブログに来てくれた人は、おそたく自分が陰キャラだという自覚があるのでしょう。しかし現実として、根が陰キャラの人が大学デビューできる確率は低いです。まずは自分の外見を見てください。以下のチェックリストで確認してください。

☑ 髪の毛にフケは付いてない
☑ 毎日おフロに入っている
☑ 歯を磨いている
☑ マユ毛を放置していない
☑ メガネに手垢は付いてない
☑ ちゃんとコンタクトに変えている
☑ 服はトレーナーではない
☑ 服を洗濯している
☑ オタク特有の変なネックレスを付けてない
☑ シャツが伸びきっていない
☑ 靴は汚れてない

最低でもこれだけの条件はクリアしなければいけない気がします。そして陰の感覚は自分で思っている以上に健常者とズレています。髪型、服装、話し方、感性、あらゆる面で健常者とは合わないと、陽キャラにはなれません。

大学デビューは幻想か

結局、大学で陽キャラとして活躍できるのは健常経験値を積んできた者だけなのかもしれません。高校まで陰キャラだった人間が、いきなり陽キャラになれるわけがなかった。僕はそれを知りませんでした。レベル1の勇者が強力な武器だけ装備して魔王に勝てるだろうか。巷で騒がれている大学デビューは全て幻想。生まれながらに人生の勝敗は決まっている。陰キャラの世界で生きてきた人間は、死ぬまで陽キャラにはなれません。

来世はキラキラと輝く陽キャラになりたかった。

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