無内定で大学を卒業した男

人生

就職活動をしているとき、「ゴールデンウィークまでに内定を取らなければ人生終了」と言われていました。優良企業は4月までに内定者を決めてしまい、ゴールデンウィークを過ぎても募集をかけてるのはブラック企業だけという話です。

それが真実なのかどうかは分かりませんが、勝ち組と呼ばれる上位カースト学生はゴールデンウィークのあと就職活動をまったくしていませんでした。

非正規な人生を送っている私は当然4月に内定が出るはずもなく、5月を過ぎ、6月を過ぎても就職活動を続けていました。これは無内定で大学を卒業した時の話です。

就職活動、何をしていいかわからず…

学友が一人もいない私は就職活動の情報を得ることもできず、何から始めればいいのかもわかりません。匿名掲示板「2ちゃんねる」を見て情報を得るだけでした。

とりあえず誰でも知ってる有名企業にエントリーしましたが、面接に呼ばれることなく時間だけが無駄に過ぎました。企業研究や自己分析のやり方もわかりません。聞く人を見つけることもできませんでした。

自閉症スペクトラム

こだわりが強く、一つの事が気になると次の行動に取りかかれない自閉症スペクトラムなので、一つの企業にエントリーしたらその結果が返ってくるまで何もできない状態になるのです。

普通の学生が10社も20社も同時にエントリーして手帳にビッシリに予定を詰めていると知ったのは無内定で大学を卒業した後でした。身の程を知らずに大企業に応募する。結果を待つ。落ちてたら次を探す。

そんなことをしていたらゴールデンウィークが終わっていました。

外食や小売に応募する

6月にもなると有名企業の募集はほぼ終了していました。まだ募集をかけているのか外食チェーン店やスーパーなどの小売業で、私もそういう業界に応募するようになります。

エントリーシートは通過するも、面接に行くことはできませんでした。就職活動をしながら掲示板で外食や小売の過酷さを読んでいると「この業界は無理だ…」という気持ちが強くなってきて、だんだんと不採用にしてくれと言わんばかりの志望動機を書くようになりました。もうこの業界に行く気は完全になくなっていました。

親に就職活動をしていると思わせるために応募だけして、カラオケに行って時間をつぶすような悲惨な毎日が続きました。

教官に見捨てられる

大学の研究室で一人だけ内定を取れていない学生を哀れに思った教官が、隣の研究室の教授に頼み込んで、教授のコネがある企業に紹介してもらえることになりました。

去年もそれで入社した学生がいたようです。「相当変なやつじゃない限り大丈夫だ」と言われ、面接に向かいました。

しかし、これが初めての面接となる私は頭が真っ白に。

一週間後、僕は教官に呼び出されました。

「おまえ、面接で一体何をやったんや?◯◯先生から結果を聞いたけど、働きたい気持ちが全然伝わってこなかったって。恥ずかしいことせんとってくれや…」

警察官採用試験を受ける

卒業研究が忙しくなり、ほどなくして就職活動をしなくなりました。親に言われても「研究室が忙しいから」と言って無視していました。本当はもう就職活動で傷つくのが怖かった。

そんな中、警察官が合格しやすいという情報を手に入れ、警察官採用試験を受験することにしました。筆記試験はこれまで受けてきた公務員試験よりも簡単で、面接実技試験に行くことができました。

実技試験は腕立て伏せと腹筋。試験会場の移動中、警察学校の様子を見て驚愕しました。教官が激怒する、三歩以上は歩くの禁止、とにかく恐ろしい雰囲気がビシビシ伝わってきて、怖気づいた私が面接で行った一言は…

「警察は第一志望ではないです。」

無内定で大学を卒業

内定が無いまま極寒の冬が過ぎ、卒論発表が終わりようやく卒業資格を得ました。しかし内定は未だ無し。楽しい思い出は何もなかったけど、5年間通った大学なので一応卒業式には出席しました。

友達も恋人もいない大学生の卒業式。何の感情も湧いてこない。帰りに牛丼を食べました。

地獄の大学生活が終わり、次の地獄が私を待っていました。

両親からの激しい罵倒

卒業式が終わり、学生という肩書きが消え、いかなるコミュニティにも属していないという、糸の切れた凧のような stand alone な人間になりました。

その日から親の態度が今までになく激しいものへと変わります。

「仕事決まってないけどどうすんねん」
「だから公務員になれって言うたんや」
「将来について考えてるんか」
「人生を甘く見すぎ。家から追い出すぞ」

そんな状態で父が探してきたIT派遣企業に契約社員として入社しました。プログラム未経験、文系、外国人、誰でも採用していたような企業です。

その後、リーマン・ショックと鬱が重なり会社を辞めました。

人生終了

就職活動で複数企業にエントリーする人、就業中に次の転職先を探す人。僕にとっては超人に思えます。この非正規な人生を招いた原因は健常者のように立ち振る舞えない自分の特性にあります。

なぜ周りと同じように頑張れなかったのか。いつ健常レールから転落していたのか。思い返しても分かりません。もう一度大学に戻ってもきっと無内定で大学を卒業死ます。

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